マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

命の儚さを

 世界保健機関World Health Organization, WHO)が、いわゆるパンデミック・フェーズを「3」から「4」に引き上げましたね。
 フェーズ3は、

 ――ヒトで新型インフルエンザの感染があるものの、ヒトからヒトへの感染はないか、あっても少ない。

 というものであり――
 フェーズ4は、

 ――ヒトからヒトへの新型インフルエンザの感染が地域限定で確認されているものの、感染の広がりは小さい。

 というものです。

 もし、「感染の広がりは小さい」が「大きい」になればフェーズ5へ、「地域限定で」が「世界各地で」になればフェーズ6へと引き上げられます。

 メキシコでの感染の広がりを受け、当初はフェーズ3からフェーズ5への引き上げも検討されたようですが――
 今のところは、フェーズ4にとどまっています。

 各種報道機関が伝えているところですが――
 今回のWHOの姿勢は、今ひとつ煮え切らないものがあります。

 最大の理由は、新型インフルエンザによるとみられる死者がメキシコで何十人も出ているのに、他の地域では一人も出ていない、ということでしょう。

 ――死者がメキシコに限定されているのは、他の要因が重なっているためで、新型インフルエンザの病原性自体は弱いのではないか。

 という憶測が飛び交っています。
「他の要因」というのは、感染者の病前の健康状態や医療機関の診断や治療の技術水準などです。

 僕も、このニュースをみたときに真っ先に思ったのは、
(なんでメキシコだけ?)
 というものでした。

 もし、メキシコ以外で死者が確認されたら、そのときに初めて危険性を実感するでしょう。

 ただ、忘れてはならないのは、パンデミックが起ころうと起こるまいと、日々、大勢の人々が病気で亡くなっているという事実です。

 仮にパンデミックが起こったとしても――
 その結果として引き起こされるのは――
 ふだんからの病気による死亡率を押し上げることでしかなく、ゼロだった死亡率がゼロでなくなるということではありません。

 このニュースは、健康な人たちばかりに囲まれて生活している人にとっては、あたかも異世界から襲来してくる魔物のような不気味さを備えているに違いないのですが――
 そのような魔物は、実は僕らの日常に、いくらでも潜んでいます。

 今回の騒動を、健康な人にとって自分の命の儚さを思う機会と捉えることも、決して悪くはないでしょう。