――数学は自然科学でない。
などと主張すると――
ビックリする方もおられるでしょうか。
実際、数学を自然科学に含める考え方は、日本では、かなり根強いのですね。
が――
自然科学の最大の特徴を、
――自然物についての実験や観察に基づく仮説検証の連続である。
と、みなせば――
数学を自然科学に含めるのには躊躇するはずです――
通常、数学の世界で扱われる数式や図形などは自然物とはみなされませんし、自然科学の世界での実験や観察に相当する行為は数学の世界には見当たりませんので――
もっとも――
数式や図形を仮想の自然物とみなすことは可能ですし、数式の試算を実験になぞらえたり、図形の吟味を観察になぞらえたりすることも不可能ではありませんので――
そのような意味では、
――数学にも自然科学的な要素は含まれる。
と、いってよいでしょう。
数学と自然科学との違いの中で――
おそらく最も決定的なものは、
――仮想かどうか。
あるいは、
――現実かどうか。
だろうと思います。
数学が仮想で、自然科学が現実です。
ここでいう「仮想」とは、
――あたかも現実であるかのような虚構――
くらいの意味です。
仮想というのは、単なる虚構とは違うのですね。
数学が好きな人は、仮想が好きなのです。
そして――
たぶん現実が好きではないのです。
――その目で本当に美しいものをみようと思ったら目を閉じるしかない。
などと、いわれますが――
そうした信念に通じるコダワリのある人が、数学を愛しているのだと思います。