ここ一年くらい――
洋食屋さんを探しております。
みるからに「洋食屋さん」という風情のレストランです。
数年前までは、東京の上野にお気に入りの洋食屋さんがあって――
都内に行く時には、なるべく足を運んでいたのですが――
去年、そのお店がなくなってしまいました。
それで、新たに行きつけとしたい洋食屋さんを探しているのです。
「洋食」というと、いわゆる西欧料理のことだとお考えの向きもありましょうが――
僕にとっての洋食とは、明治以降、日本が独自に育んできた西欧風の日本料理のことです。
そうです。
洋食とは日本の料理なのですよ。
明治の料理人たちが、西欧料理を日本人の口に合うようにアレンジしたのです。
したがって、
――いかにも洋食屋さん
みたいなレストランというのは――
少なくとも僕にとっては――
今の世に明治の香りを伝えてくれるレストランです。
当時、
――ざん切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。
などと歌われたそうですが――
さしずめ、
――スプーンやフォークで頬張れば、文明開化の味がする。
みたいな洋食屋さんを探しているのですよ。
あくまでも「スプーンやフォーク」です。
「ナイフとフォーク」ではないのですよ。
それでは、本格的な西欧料理になってしまいますからね(笑