自然科学の世界には、独特の「美の概念」が存在しています。
その「美しさ」を敢えて言葉にするならば、
――すぐに理解できる。
――よく整理されている。
――ムダがない
――恣意性がない。
などとなるのですが――
もっと砕けた感じでいえば、
――最初はよくわからなかったのに、十分に吟味した上で見直したら、スゴくよくわかった。
ということです。
典型例はアインシュタインの相対性理論でしょう。
この「美の概念」で鍵を握っているのは、「最初はよくわからなかったのに」のほうです。
決して「スゴくよくわかった」のほうではない――
「最初はよくわからなかったのに」が「スゴくよくわかる」に変換されるから「美しい」のであって――
「最初からよくわかっていた」が「さらにスゴくよくわかった」に変換されても「虚しい」だけなのですね。
つまり、「最初はよくわからないもの」を探し、その「わからなさ」を明瞭に認識することが、自然科学の営みの端緒です。