情念が怨念に変わるとき――
それは、何かが赦せなくなったときでしょう。
例えば――
男が女に恋をして、おのれの情念を激しく滾らせて――
その挙げ句の果てに、その女が自分を袖にしたとすれば――
そのときに、怨念が首をもたげます。
すなわち――
その女を赦せるかどうかが、心理の山肌の分水嶺となる――
世の中には、情念の滾りやすい人と、そうでない人とがいます。
概して――
情念の滾りやすい人は、怨念を抱きやすい――
が――
赦しを知るならば、怨念からは自由です。
赦しを知らないならば――
怨念の虜になります。
情念に打ち克ちうる赦しの強さが、唯一、怨念を抑え込むでしょう。