予期される美談は受け入れ難いと感じます。
――今から、いい話をしますよ。
といわれて「いい話」をきかされると――
どうにも釈然としません。
思わず舌を打ちたくなる――
美談は不意打ちに限ります。
それとなく話をきいているうちに、「いい話」になる――
それだったら、自然と清々しい気分になれるものです。
逆に――
醜聞は予期されるほうが受け入れ易いと感じます。
――くるぞ、くるぞ、くるぞ……きた~!
と、きわめて予定調和的にきかされると――
必要以上の嫌悪感を抱かずに済む――
ひょっとすると、
――どこまでが本当なんだか……。
と冷静な批判精神を動員することができるかもしれない――
美談は不意打ち、醜聞は予定調和――に限ります。