酒を飲むと、口が滑らかになり――
色々と余計なことも喋ってしまいますが――
その「余計なこと」が人間関係の潤滑油になったりするので、ちょっと不思議です。
「余計なこと」の多くは、
――本音
でして――
普段なら絶対に口にしないほうがよいことなのですが――
それを、
――ついうっかり酒の勢いで――
喋ってしまうことで――
――な~んだ、そんな風に思われていたのか!
と合点がいく――
つまり――
酒が「人間関係の潤滑油」になるメカニズムは、おそらく、本音の暴露にあります。
ということは――
酒の効用を十分に享受するためには、
――本音の暴露に動じないだけの胆力や度量が必要である。
ということでもあります。
こうした精神力や寛容性を抜きにしては、酒の席を楽しむことは難しいでしょう。
アルコールの薬理作用は、総じて抑制です。
脳の働きをまんべんなく弱めてしまうと理解してよいでしょう。
当然、理性の働きも弱めてしまうはず――
精神力や寛容性の限界が厳しく問われる状況なのです。
そうした状況において、他者の本音に進んで暴露される――
これは、
――宴の逆説
と呼んでも、差し支えないでしょう。