作家は、自分の作品の出自を知られたくないと感じるもののようです。
例えば、
――この作品は、あの出来事をもとに書かれている、
などと分析されるのを好まない――
その「出来事」が自分のプライベートに直結している場合は、なおさらです。
あるいは、ほかの作家の作品に強く影響を受けているような場合も――
なぜか。
おそらく――
自分の作品が歪められるように感じるからでしょう。
作品が出自に絡めて理解されるということは、自分の意図を越えて理解されうるということであり――
それは、作家にとっては、誤解・曲解に等しいのです。
が――
読者は違う――作品の出自に自然と関心がゆく――
作家にとっての「誤解・曲解」は、読者にとっての「深読み」です。
かくして――
イタチごっこが果てしなく続きます。
それでいいのだと思います。