――日本人はストーリーが好きだ。
という見解を耳にしました。
結末がわかっているストーリーを何度でも繰り返し楽しむことができる、と――
例えば、落語などを思い浮かべればよいでしょう。
たしかに、そうした一面はあると思うのですが――
一方で、
――日本人はストーリーを作るのが嫌いだ。
とする見解もあります。
例えば、日本人の学者は、研究の論文や口演の中にストーリーを作りこむことが苦手です。
よって、ついデータや知見、解釈などの羅列に終始してしまう――
一方でストーリーを好み、一方でストーリーを嫌う――
他者の供覧するストーリーなら喜んで堪能するけれども――
自分でストーリーを構築することは、したがらない――
もしかすると――
日本人にとってストーリーとは、自分で作るものではなく、そこに最初からあるものなのでしょう。
誰が作ったか、わからない――
いや――
人が作ったかどうかもわからない――
そういうストーリーが好きなのでしょうね。
もちろん――
落語のストーリーだって、その昔は、誰かの手によって作られたはずなのですが――
そのことを、あまり意識はしたがらない――
落語のストーリーは、そこに最初からあるものだと思って聞いている――
日本人にとって、ストーリーは、その出自や起源があいまいであればあるほどに、より魅力的に聞こえるようです。