――10円を笑う者は10円に泣く。
などといいますが――
僕は、これ、ウソだと思っています。
――10円に縋(すが)る者が10円に泣く。
がホントでしょう。
例えば――
ふだん10円の誤差を一笑に付すような人が、どうしても必要なものを10円の不足金で断念するときに――
たぶん、その人は、そんなことでは泣いたりしないと思うのです。
――もし、たった10円の不足で買えないというのなら、それは買っても買わなくても大差はない、という神様のお告げだ。
くらいに考えることでしょう。
10円の誤差を真の意味で一笑に付すような人は――
どうしても必要なものを買うときには、必要な金額の一桁上の金額を用意しておくものです。
もちろん――
ことは相対的です。
「10円」が「100円」や「1000円」や「10000円」であっても――
話は同じです。
ただし――
10000円の誤差を真の意味で一笑に付すためには、当然ながら、尋常ならざる財力が必要でしょう。