僕は、物語の世界の悪役に興味があって――
どういう悪役が、悪役としての魅力を存分に発揮しうるのか――
ということに関心をもっています。
例えば――
その世界の「正義の味方」によって、
――この卑怯者!
と糾弾されて、
――は、は、は、は……。卑怯者で大いにけっこう。それは私への最大の褒め言葉だ。
とかいって反駁する悪役は――
悪役としては、かなり魅力的だと、僕は思いますが――
でも――
もし、現実の世界に、そういう人間がいたら――
……
……
疲れますよね……(苦笑
……
……
少なくとも、ぜんぜん魅力的ではない……。
悪役が十分な魅力を発揮するには、その虚構性が命綱になるのだろうと思います。
――そういう悪役は決して現実の世界には存在しえない。
という確信を与えるくらいに、その悪役の人物造形が十分な虚構性で満たされている限り――
悪役は、悪役としての魅力を存分に発揮しうるのです。
もし、その虚構性が、現実味によって少しでも“汚される”なら――
悪役は、ただの厄介者に成り果てるのです。