ヒトの体のことは――
ひとたび気にかけようと思ったら、これ以上ないくらいに気になるものですが――
気にかけようと思わなかったら、まったく気にならないものなのですね。
自分の健康が保たれていて、これといった不快な症状はなく――
また、身近な家族にも、同じような問題が生じていないのなら――
ヒトの体のことは、まず意識にのぼらないのです。
が――
ひとたび自分の健康が損なわれ、かなり不快な症状が続いたり――
あるいは、身近な家族に、同じような問題が生じていれば――
ヒトの体のことが、にわかに意識にのぼるようになります。
不調になって、その取り扱いがヒドく厄介になって初めて――
ヒトの体は注意や関心の対象となります。
が、残念ながら――
そうなったときには――
すでに手遅れになっていることも多いのですね。
体が不調になって、つらい思いをしているときには――
すでに、体のことに注意や関心を払う余裕がなくなっていることも、少なくありません。
本来なら、体のことが、すごく気になるはずなのに――
まったく気にかけることができない――
それは、多分かなり不幸なことですが――
世に広く知られた不幸ではありません。