誰かが思わずポロっと洩らした本音というのは――
それが自分にとって極めて重要な本音である場合には、さらっと聞き流し――
さほど重要でない本音である場合には、何か感想を述べるほうがよい――
……のだそうです。
何かの推理小説で、名探偵役の登場人物が語っていました。
まあ――
物語の中での話ですから、真に受ける必要はありませんが――
(たしかに、そうだろうな~)
とは思います。
うっかり本音を洩らしたほうからすれば――
何か感想が述べられれば――
きっと、
(しまった! どうしよう?)
と狼狽するかもしれません。
そして、もっと重要な本音を口走るかもしれない――
逆に――
さらった聞き流されれば――
きっと、
(よかった! 気づかれなかった!)
と安堵するかもしれません。
そして、重要な本音が洩れたことに気づかない――
おそらく――
推理小説における探偵役と犯人役との虚実入り乱れた駆け引きの原型が、ここには隠されています。
こういう駆け引きは、虚構だからこそ面白いのであって――
現実に行われれば、殺伐と感じられますよね。
駆け引きは――
現実の世界では、しないに越したことはありません。