いわゆる高校数学のなかで――
何か一つだけ重要なポイントを選べといわれたら――
練達の数学教師の多くは、
――必要条件・十分条件の概念
を挙げるでしょう。
決して微分・積分の概念などではない――
なぜかといえば――
必要条件や十分条件の概念とは、数学に特有の数式や演算から離れても活用できるからです。
必要条件とは、よりユルい条件――成立させやすい条件――のことです。
例えば、東京都内に住むための必要条件は「日本国内に住む」です。
東京都内に住むためには、少なくとも日本国内に住むことが必要だからです。
一方――
十分条件とは、よりキツい条件――成立させにくい条件――のことです。
例えば、日本国内に住むための十分条件は「東京都内に住む」です。
日本国内に住むためには、東京都内に住んでさえいえれば十分だからです。
世の中の多くの問題に取り組む際には、その問題を解決するための必要条件を幾つも幾つも挙げることです。
注意すべきは――
十分条件を挙げることではないのですね。
十分条件を挙げても間違えることが多い――
日本国内に住むための十分条件として「東京都内に住む」を特定することは、案外、間違えやすいのですね。
うっかり「北京市内に住む」とか「首都内に住む」とかと、やってしまいがち――
十分条件ではなく必要条件を探すこと――
それが、人間の知的営みを間違いの少ないものにするコツだということが最も大切なのです。