同じ議論でも――
図や数式を使うと、とたんに精緻で豊穣な議論になるものです。
言葉にはない厳密性が付与されるからだと思います。
図や数式には有無をいわせない厳密性があります。
例えば、
F = ma
という数式には、厳密性がある――
その一例が「F = ma」という表記の仕方それ自体です――「F = ma」は「ma = F」とは違うという意味での厳密性ですね。
このような厳密性は、言葉だけで議論していては、なかなか付与できない――
――力は質量と加速度との積に等しい。
といっても、
――質量と加速度との積が力に等しい。
といっても、
――まあ、同じこと。
と捉えられることがほとんどです。
数式の厳密性を利用して、物理学では、ある約束が定められたといいます。
それは、
――等号「=」の左は結果、右は原因を表す。
という約束です。
つまり、「F = ma」は「質量aの物体が加速度mで運動すると、力Fが生じる」という因果関係を示唆していることになります。
決して、その逆の因果関係ではないのです。