どんな場合でも自分の意見をいおうとしない人は――
ふつうは侮られるものですが――
もし、その人が、明らかに自分の意見を持っていて、しかも決して口下手ではない時には――
むしろ深い敬意の対象となるでしょう。
――ああ、あの人は、自分の意見をあえていわないでいるのだ。自分を律しているのだ。
と解釈されるからです。
実際、弁舌がたち、知識が豊富で、洞察が深遠な人が、自分の意見をいわないでいるというのは――
一種の苦行であろうと思います。
その気になれば、いくらでも自分の意見を示し、相手を説得できるかもしれないのに――
それをあえてしないというのですから――
そういう人には――
ここぞというところで、そっと問いかけることです。
――ところで、ご自分では、どのようにお考えなのですか。
と――
――そういえば、今までお考えを承っておりませんでした。ぜひ承りたく存じます。
と――