恋愛も戦争も――
根底にあるのは――
人の情と理とのせめぎあいです。
――あの人と一緒にいたい!
という情と、
――実際に一緒にいようとしたら、どうなるか。
という理とのせめぎあいが恋愛ですし――
――あの国を懲らしめてやる!
という情と、
――実際に懲らしめようとしたら、どうなるか。
という理とのせめぎあいが戦争です。
……
……
――情
というのは――
人にとって、わかるようでわからない深遠な淵です。
わかったつもりになるのは簡単なのですが――
自分の情を「情」として正確に意識し、認識することは――
そんなに簡単なことではありません。
一方、
――理
というのは――
人にとって、都合よく歪められやすい脆弱な枠です。
歪みに気づけば直すことは簡単なのですが――
歪みを歪みとして的確に把握し、矯正することは――
そんなに簡単なことではありません。
……
……
このように、“深遠な淵”を“脆弱な枠”で囲うのが――
恋愛であり、戦争であるのですね。
もちろん――
原則として――
恋愛は、個人と個人との間で成り立つものであり――
戦争は、集団と集団との間で成り立つものであり――
規模も帰結も全く異なりますが――
それでも――
情と理とのせめぎあいであることに――
変わりはありません。
“脆弱な枠”の歪みが酷ければ――
“深遠な淵”に足を滑らせるところなどは――
そっくりです。