高校生だった頃、
――統計のウソ
という言葉が――
うさんくさく感じられました。
40歳になった今は――
そんなことはありません。
(たしかに「統計のウソ」はある)
と思っています。
もちろん、「統計のウソ」にも色々あるのですが――
僕が一番「統計のウソ」らしい「ウソ」と思うのは、次のような例です。
――A~J10世帯の貯金額の平均値は1000万円であるが、中央値や最頻値は300万円である。
ここでいう「中央値」とは、貯金が5番目および6番目に多い世帯の貯金額を指し、「最頻値」とは、もっとも世帯数の多かった貯金額を指します。
こうした例は、次のような場合を想定すれば、実現しうるとわかります。
A :100万円
B・C :200万円
D・E・F:300万円
G・H :400万円
I :800万円
J :7000万円
ポイントは――
平均値が1000万円であるということにも、中央値や最頻値が300万円であるということにも、とくに虚偽はない――
ということです。
これこそが、いかにも「統計のウソ」らしい「ウソ」だと、今の僕は考えています。
こうした例とは別に――
故意に虚偽を盛り込んだ「統計のウソ」もあります。
例えば、同じ例で、
――A~Jの10世帯の貯金額の平均値は1000万円である。よって、平均的な世帯の貯金額は1000万円程度であるといえる。
という場合です。
たしかに、これも「統計のウソ」に違いはありませんが――
僕にいわせれば、これは、
――ふつうのウソ
です。
なぜならば、「よって」以下は明らかな虚偽の記述ですので――
高校生だった頃、僕は「統計のウソ」と「ふつうのウソ」との区別を明確に指摘できませんでした。
このために、「統計のウソ」に、うさんくささを感じていたのでした。
(それって、突き詰めて考えれば、つまりは「ふつうのウソ」なんじゃないの?)
と――
そうではないのです。
「統計のウソ」とは、本来、何の虚偽も含まない「ウソ」です。