きのうの朝――
歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんがご出演になっていて、
――「褒められたことは疑え」と、父から教わった。
といった主旨のことをおっしゃっていました。
(たしかに……)
と感じ入りました。
ひと頃、
――人は褒めて伸ばせ。
と、しきりに叫ばれた時期がありましたが――
実は――
褒めるばかりでは、人は、うまく伸びないのですよね。
というのは、
――心ない褒め言葉
というものが――
人の世には、たしかに存在するからです。
坂東玉三郎さんは、
――人をダメにしたければ、褒め続ければいい。
といった主旨のことまで――
おっしゃっていました。
もちろん――
それだけ強く「心ない褒め言葉」への注意を喚起されたかったのでしょう。
人は、何か下心があって褒めることがあります。
本当に「すばらしい!」と思って褒めることは、むしろ少ないでしょう。
相手に気に入られたい――あるいは、ご機嫌を取りたい――
そういう下心に突き動かされて褒めることのほうが、ずっと多いように感じます。
そうした褒め言葉を一概に悪いというつもりはありません。
おそらく、それは――
人の世を和やかにすることには大いに役立っていて――
そうした観点では間違いなく意義深いのですが――
でも、それは――
決して「すばらしい!」と心から思って褒めているわけではないという意味では――
たしかに「心ない褒め言葉」なのです。
誰かに褒め言葉をかけられたら、その時こそ十分に気をつけなければならない――
それが「心ない褒め言葉」でなかったかどうかを真剣に見抜かなくてはならない――
褒め言葉を糧にするには――
そうやって警戒していくより、仕方がないのですね。
そうした警戒の仕方も十分に体得させなければ――
人を褒めて伸ばすことは絶対にできないでしょう。