マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

心ない褒め言葉

 きのうの朝――
 テレビのチャンネルをトーク番組(TBS系列『サワコの朝』)に合わせたら――

 歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんがご出演になっていて、

 ――「褒められたことは疑え」と、父から教わった。

 といった主旨のことをおっしゃっていました。

(たしかに……)
 と感じ入りました。

 ひと頃、

 ――人は褒めて伸ばせ。

 と、しきりに叫ばれた時期がありましたが――

 実は――
 褒めるばかりでは、人は、うまく伸びないのですよね。

 というのは、

 ――心ない褒め言葉

 というものが――
 人の世には、たしかに存在するからです。

 坂東玉三郎さんは、

 ――人をダメにしたければ、褒め続ければいい。

 といった主旨のことまで――
 おっしゃっていました。

 もちろん――
 それだけ強く「心ない褒め言葉」への注意を喚起されたかったのでしょう。
 

 人は、何か下心があって褒めることがあります。
 本当に「すばらしい!」と思って褒めることは、むしろ少ないでしょう。

 相手に気に入られたい――あるいは、ご機嫌を取りたい――
 そういう下心に突き動かされて褒めることのほうが、ずっと多いように感じます。

 そうした褒め言葉を一概に悪いというつもりはありません。

 おそらく、それは――
 人の世を和やかにすることには大いに役立っていて――
 そうした観点では間違いなく意義深いのですが――

 でも、それは――
 決して「すばらしい!」と心から思って褒めているわけではないという意味では――
 たしかに「心ない褒め言葉」なのです。

 誰かに褒め言葉をかけられたら、その時こそ十分に気をつけなければならない――
 それが「心ない褒め言葉」でなかったかどうかを真剣に見抜かなくてはならない――

 褒め言葉を糧にするには――
 そうやって警戒していくより、仕方がないのですね。

 そうした警戒の仕方も十分に体得させなければ――
 人を褒めて伸ばすことは絶対にできないでしょう。