マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

心の色気の醸し方

 ――心の色気を感じとるとき、人は、体の色気にまつわる記憶を呼び覚ましている。

 というようなことを――
 おとといの『道草日記』で述べました。

 つまり、

 ――心の色気の感じ方

 とは、

 ――体の色気にまつわる記憶へ、いかに確実にアクセスするか。

 ということになります。

 では、

 ――心の色気の醸(かも)し方

 は――
 どうでしょうか。

 ……

 ……

 理論的には――
 簡単です。

 心の色気を醸したい相手に、体の色気にまつわる記憶へ、確実にアクセスさせればよい――

 ……

 ……

 たしかに理論としては簡単ですが――

 実践となると――
 かなり難しいでしょう。

 何しろ――
 相手を相手自身の記憶へアクセスさせる――つまり、相手の心の働きを操作する――という話ですから――

 ……

 ……

 種を明かすと――

 体の色気にまつわる記憶を呼び覚ましやすい言葉というのが――
 いくつか知られていて――

 そうした言葉を要所に効果的に配置することで――
 人は、心の色気を醸しだすことができる、と――
 考えられています。

 いわれてみれば、

 ――なあんだ。

 と、お思いでしょう。

 ただし――
 難点があります。

 そうした“体の色気にまつわる記憶”を呼び覚ましやすい言葉というのは――
 言語圏や文化圏はもちろん、年代や性別によっても、まったく異なるのですね。

 ある言語圏や文化圏における特定の年代の男性には、抜群に効果的な言葉であっても――
 それ以外の男性にとっては、あるいは、あらゆる女性にとっては、

 ――はあ~?

 というような言葉であったりするのです。

 そんな言葉の典型が、

 ――アベック

 です。

 男女二人組を指す外来語ですね。

 フランス語の前置詞「avec」に由来します。
 「~と共に」という意味で、英語の「with」に相当します。

 この「アベック」に格別“心の色気”を感じとる人たちというのが――
 日本のある年代に集中しているのだそうです。

 僕は1970年代生まれですが――

 僕にとっては、
(はあ~?)
 という感じです(笑

 むしろ、「アベック・ホームラン」に象徴されるように――
 何となく日本のプロ野球を連想する言葉ですね。

 が――
 この「アベック」を、

 ――いい言葉だなあ。

 と思われる方が――
 それなりにいるのだそうで――

 たぶん、「フランス語」というのが、魅惑のもとなのでしょう。

 わからないでもありません。