心の色気を感じとるには――
どうしたらよいのでしょうか。
何か確実な方法があるのでしょうか。
それも――
何かの拍子で偶発的に感じとるのではなく――
必然的かつ意図的に感じとれる方法が――
……
……
鍵となるのは――
僕ら自身の記憶だ、と――
僕は考えています。
意識的か無意識的かは、さておいて――
自分自身の記憶を呼び覚ますことで――
僕らは――
心の色気を感じとることができるのです。
その記憶とは――
かつて誰かから感じとった“体の色気”についての記憶です。
それは、感覚の記憶であったり、感情の記憶であったり、思考の記憶であったりするでしょう。
感覚の中には、もちろん、視覚が含まれますし、聴覚・嗅覚・触覚――場合によっては、味覚――も含まれます。
それら感覚に付随して感情や思考に何らかの変化が生じ――
それら変化が記憶となって、あなたの心の奥底に数多く沈降していれば――
それらを呼び覚ますことで――
あなたは心の色気を感じとります。
……
……
――本当か。
と訝る方は――
いま一度、
――挿絵のない官能小説
を思い浮かべることです。
そんな小説を――
自分自身の心の奥底に沈降した“体の色気”についての記憶を呼び覚ますことなく、読んだところで――
ただ、ひたすらに味気ないだけであることは、容易に想像がつくでしょう。
“心の色気”は、“体の色気”についての記憶によって裏打ちされています。
誤解を恐れずにいえば――
“心の色気”は“体の色気”の追想です。