マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

それは高級な賛辞と思って間違いない

 いつからか、

 ――目力(めぢから)

 という言葉を――
 よく耳にするようになりました。

 意味は、

 ――目から感じられる人の意志や気持ちの強さ

 といったところでしょうか。

 最近になって多用されるようになったそうで――
 以前は、単に「視力」の意味で用いられることもあったそうです。

 面白いのは――
「目力」とは、決して「目の力」のことではなく、あくまでも「意志や気持ちの力」のことなのに――
 なぜか「目」が「力」を修飾している――
 という点です。

 ここに、


 といいますか――
 もう少し大げさにいえば、

 ――思想の発展

 を見てとることができます。

 古くから、

 ――目は口ほどに物をいう。

 といいますね。

 ――言葉で表さなくても、目つき次第で意志や気持ちは十分に伝わる。

 くらいの意味です。

 僕は、「目力」というのは、「目は口ほどに……」を前提としている言葉ではないかと考えています。

 人は目つき次第で意志や気持ちを十分に伝えることができる――
 その伝える力のことをとくに「目力」と呼んで意識しよう――
 そういう発想が、「目力」の背景には隠れているように思います。

 もう一つ、忘れたくないことは――
「目は口ほどに……」には否定的な意味合いも含まれていますよね。

 ――目つきには、その人の本心が透けてしまうものだ。

 というように――

 そういう否定的な意味合いを巧く濾(こ)しとった後に残された言葉が、

 ――目力

 ではないでしょうか。

 今日、「目力」に否定的な意味合いは皆無だと思います。

 ――あの女性には目力がある。

 といえば――
 それは高級な賛辞と思って間違いないでしょう。