マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「自然に身を任せて生きるのが良い」を真に受けると

 自然に身を任せて生きるのが良い、というのが――
 中国古典の老荘思想に通底する発想なのだそうですが――

 これを真に受けるのは危険でしょう。

「自然に身を任せて生きる」ということを厳密に徹底するならば――
 けっこう大変な思いをすることになります。

 極端な話、

 ――雨が降ってきたけれども、傘はささずに、このまま濡れていよう。

 とか、

 ――体の具合が悪くなってきたけれども、薬を飲むのはやめておこう。

 というのが、厳密な意味での「自然に身を任せて生きる」です。

 老荘思想の根幹は、そうではなくて――
 おそらくは、

 ――過度に意図的・意識的に生きるのは良くない。

 という発想です。

「いかなる外出であっても、雨具は絶対に持っていこう」とか、「すべて病気に備えて、あらん限りの予防薬を飲んでおこう」とかいった発想を――
 戒めているのですね。

 つまり――
 自分の暮らしを自分の意識的な作為でがんじがらめに固めることの愚かさを説いているのであり――
 作為を適度な強さにとどめることで、心地よく自然に身を任せていこう、ということです。

 喩えるなら――

 同じ川の流れに身を浮かべるにしても――
 川面の流れの速いところではなく、緩やかなところで身を浮かべる――
 とか――

 あるいは――
 息が楽にできるように、俯せではなく、仰向けに身を浮かべる――
 とか――

 たしかに――
 強すぎる作為は自分の身や心を苦しめますが――

 もし、意識的な作為が完全になかったら――
 人は、少なくとも心地よくは暮らせないと思うのです。