誰かと恋の話をするのは――
危険を伴います。
恋の話をすることによって――
その「誰か」との間に深刻な軋轢が生まれかねない――
軋轢を回避するには――
少なくとも2つの観点から、留意が必要です。
第一に――
その「誰か」が、きちんと恋を理解しているかどうか――
例えば、恋と愛との違いをしっかりと把握しているかどうか――
恋をよく理解していない相手と恋の話を始めてしまうと――
「恋」と「恋以外の何か」とが混同されて――
ときに思わぬ誤解が生まれます。
第二に――
その「誰か」が、自分の恋の対象になりえないかどうか――
あるいは、自分が、その「誰か」の恋の対象になりえないかどうか――
どちらかの恋の当事者と恋の話を始めてしまうと――
一般名詞の「恋」が固有名詞の「恋」にすりかわり――
ときに思わぬ激情が迸(ほとばし)ります。
このように――
恋の話は、すこぶる危険なのですが――
それでも――
人は、なんだかんだいって、恋の話を試みます。
僕も、その一人でしょう。
それだけ――
恋の話が人を惹きつけるということですが――
なぜ惹きつけるのか――
もちろん――
恋それ自体が人を惹きつけるからと考えることもできますが――
僕は――
その恋の話に伴う危険こそが、人を惹きつけているのではないかと思っています。
人は、その危険に敢えて近づくことで――
その危険の大きさを無意識に評価しようとする――
そして、どうすれば実害を被らずに済むのかを無意識に判断しようとする――
そういう存在ではないでしょうか。