マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

一点集中の発想が許される組織、許されない組織

 ――民間企業が生き残っていくためには、ヒット商品を作り続けるしかない。

 という考えを知りました。

(なるほどな)
 と感じます。

 民間企業は、ふつうは営利目的で経営されますから――
 まさに利益追求・利益獲得型の組織の典型です。

 そういう組織なら、たしかに、

 ――ヒット商品を作り続ける! ただ、それだけ! 他は何もいらない!

 というように――
 たった1つの目標を掲げるだけで済むでしょう。

 その組織に意欲と才覚とを兼ね備えた人材が多く集まっていれば――
 10個の商品のうち1個くらいは必ずヒットするでしょう。

 では、損害抑制・損害回避型の組織では、どうか――

 この場合は――
 ちょっと難しいように思うのですね。

 例えば、民間病院は損害抑制・損害回避型の組織の典型ですが――
 そういう組織が、

 ――最高の医療を提供し続ける! 目標は、それだけ! 他は何もいらない!

 と――
 たった1つの目標しか掲げなかったら、どうなるか――

 ほどなく経営破綻するでしょう。

 どんな民間病院でも、相応の経費(主に人件費)を投入すれば、一定の水準の医療は確実に提供できるものです。

 が――
 それでは、支出が収入を大きく上回ってしまう――

 つまり、

 ――民間病院が生き残っていくためには、良質の医療を提供し続けるしかない。

 と思い切ることは許されないのです。

 そうではなくて、

 ――生き残っていくためには、良質の医療を提供しつつ、赤字は出さないようにする。

 というように――
 少なくとも2つの目標を掲げる必要がある――実際には2つどころではなくて、3つも4つもあります。

 この原因は、何か――

 おそらく――
 損害抑制・損害回避型の課題それ自体に内在する原理的性質です。

 利益追求・利益獲得型の課題では――
 いくらでも貪欲に利益を追求し続けることができ――
 いくらでも莫大な利益を獲得できるかもしれません。

 このような課題には――
 一点集中の発想が、何よりも有効なのです。
 
 が――
 損害抑制・損害回避型の解題では――
 いくら損害を抑制しようと思っても、無限小に抑制できるわけではなく――
 いくら損害を回避しようと思っても、永遠に回避し続けられるわけでありません。

 このような課題には――
 おそらく、一点集中の発想は通用しない――多点分散の発想でいくしかない――

 いいかえるなら――
 すなわち――
 利益追求・利益獲得型の課題では、利益を集中させなければならない――
 そうやって集中させた利益を、ある時点で一気にまとめて獲得しなければならない――

 これに対し――
 損害抑制・損害回避型の課題では、損害を分散させなければならない――
 そうやって分散させた損害を、ある時間内で一つひとつ回避し続けなければならない――

 そういうことであろうと思います。