マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

遊牧民たちが敗れた理由

 21世紀初頭の現在――

 歴史の基調は、明らかに農耕民たちの主観で定められている。

 

 遊牧民たちは、農耕民たちとの、

 ――歴史の主観の鬩(せめ)ぎ合い

 に敗れた。

 

 その直接の理由は――

 13世紀に、遊牧民たちによる“草原の帝国”が、いったんはユーラシア大草原の覇権を握りながらも――

 それを、わずか 100 年ほどしか保てずに――

 中国大陸の版図を失い、やがて呆気なく瓦解をしていったことである。

 

 が――

 他にも理由はある。

 

 間接の理由ではあるが――

 

 より本質的な理由だ。

 

 ……

 

 ……

 

 遊牧民たちは、記録を残さなかった。

 記憶に頼った。

 

 農耕民たちは、記憶に頼るだけではなかった。

 記録を残した

 

 歴史は、記録と記憶との“両輪”である。

 

 片輪が欠けていては、前に進めぬ。

 同じところをひたすら回り続ける。

 

 遊牧民たちの歴史は、いつまでも“周回”を繰り返した。

 農耕民たちの歴史は、“前進”が可能だった――“蛇行”は繰り返したが――

 

 この条件の下で――

 遊牧民たちと農耕民たちとが主観の鬩ぎ合いを行った。

 

 結果は自明であろう。

 

 人類の過半の支持を得るのは、

 ――前進

 であって、

 ――周回

 ではない。

 

 多少の、

 ――蛇行

 はあっても、

 ――前進

 でなければならぬ。

 

 ――周回

 は倦(う)む。

 

 人類の性質である。

 

 『随に――』