機嫌が悪くなってしまった時に――
その機嫌を――
容易には直したくないと思う心理が――
少なくとも――
僕にはあります。
……
……
僕だけですかね。
……
……
皆さんには――
ありませんか。
……
……
ないかもしれませんね。
……
……
その心理を一言で表すとしたら、
――臥薪嘗胆
でしょう。
中国春秋時代――
呉王・夫差が、毎夜、薪の上に臥せて寝ることで――
自分の父親が越王・匂践に敗れた屈辱を忘れないようにし――
その夫差に敗れた匂践は、毎日、苦い胆を嘗めることで――
自分が夫差に敗れた屈辱を忘れないようにした――
という故事成語です。
……
……
要は――
復讐のために自分の負の感情をわざわざ持続させたという――
何とも救いのない凄惨な話ですね。
……
……
僕は、「臥薪嘗胆」の故事成語は――
そうまでして屈辱を忘れないようにした夫差や匂践の工夫や努力を称えているのでは決してなく――
人は、その気になれば、いつまででも負の感情を引きずってしまう存在だということをそれとなく警告しているのではないか、と――
思っています。
……
……
ですから――
思うのです。
悪くなってしまった機嫌を容易には直したくないと思う心理というのは――
我ながら、実に困ったものだ、と――