人は、なかなか失敗から学ぼうとはしません。
――失敗から学んでも成功のことはわからない。それよりは、成功から学んで成功の秘訣を知りたい。
との誘惑に駆られるからです。
自然な人情です。
かくいう僕も、
(できることなら、成功の秘訣を知りたい)
と思っています。
残念ながら――
僕らは、成功から学ぶことが、できないのです。
成功には偶然の要素が含まれています――相当な割合で――10割ではないにしても、1割以上9割以下くらいの割合で――
偶然の要素というものは、当然ながら、人知を超えていて――
人が意図的に活用できるような代物ではありません。
成功か不成功かは――
この偶然の要素に、いかに上手に助けられるかにかかっています。
要するに、
――成功は偶然
なのです。
これに対し――
失敗には偶然の要素が含まれません。
必然の要素しかありません。
失敗には――
文字通り、偶然の要素とは無関係に必然的に起こる失敗以外にも――
偶然の要素に十分に備え損ねたり、備えるのを怠ったりした結果、見かけ上、偶然的に――実際に必然的に――起こる失敗があります。
失敗と失敗の予防とを分けるものは――
偶然の要素を最大限に制御しようとする意図の有無であり――
意図は、人が必然的に抱くものです。
要するに、
――失敗は必然
なのです。
よって――
偶然の要素を含む成功をいくら分析したところで、未来に有用な教訓を引き出すことは困難ですが――
偶然の要素を含まない失敗を十分に分析すれば、未来に有用な教訓を引き出すことは容易なのですね。
もちろん――
失敗から得られる教訓は、失敗の予防に関わるものだけです。
いくら失敗から学んでも、成功の秘訣はわかりません。
が――
失敗から学ぶことで――
成功に近づくことはできます。
許される失敗と許されない失敗との違いを知り――
恐れるべき失敗と恐れるべきでない失敗との違いを悟り――
その結果――
許されない失敗を防ぎ、恐れるべきでない失敗を厭わずに挑戦や試行を続けることで――
人は、成功の確率を有意に上げることができます。
僕らは――
失敗から学んで成功に近づくために、失敗から学びます。
決して、成功の秘訣を知るために……ではないのです。