――人は、成功体験に溺れやすい。
といいます。
例えば――
高校で、定期試験の勉強を頑張り、いわゆる内申点で優秀な評価を得て――
その結果、推薦入試で希望の大学に入った人が――
大学でも、単位取得の勉強を頑張り、数多くの単位を優秀な評価でとって――
その結果をもとに、就職活動で希望の会社に入ろうとする――
とか――
大学で、学業はそこそに、先輩や後輩との人脈を豊かにすることで――
実りの多い学生生活を送れた人が――
会社でも、業務をそこそこに、先輩や後輩との人脈を豊かにすることで――
実りの多い社会人生活を送ろうとする――
とか――
これらのことは、いずれも――
過去の成功を真似ることで、未来の成功を手にしようとすること――
ですね。
こうしたことを――
今、
――成功体験に溺れる。
と表現しましょう。
成功体験に溺れる人は、なぜ溺れるのか――
僕は、
(成功体験と成功体感とを混同しているから――)
と考えています。
「成功体験」とは、
――過去の成功体感
です。
「成功体感」とは、
――成功しているという感覚
です。
物事は――
成功体験に溺れると、たいていはウマくいかないのですが――
成功体感を踏まえると、たいていはウマくいくのですね。
例えば――
高校で、定期試験の勉強を頑張り、いわゆる内申点で優秀な評価を得つづけている人は――
高校を卒業するまでは、それをやめないほうがウマくいく――定期試験の勉強を不用意にセーブしないほうがよい――
大学で、学業はそこそに、先輩や後輩との人脈を豊かに保っている人は――
大学を卒業するまでは、それをやめないほうがウマくいく――下手に学業を気にして付き合いを悪くしないほうがよい――
これらのことは、いずれも――
自分の感覚を頼って、現在の成功を維持しようとすることです。
こうしたことを――
今、
――成功体感を信じる。
と表現しましょう。
成功体感を信じることは、少なくとも経験論的には、よいことです。
成功体感があるということは――
現在、意識していようが意識していまいが、良い“流れ”に乗っている――
ということを意味します。
その“流れ”に乗りつづけるためには、何か変わったことは、しないほうがよい――
全てのことを、今まで通りに、やりつづけるほうがよい――何か変わったことをすると、良い“流れ”から弾かれてしまう――
そういうことです。
ところが――
過去の成功体感を現在の成功体感と混同することは、よいことではありません。
過去と現在とでは、状況が多少なりとも変わっているはずだからです。
過去の良い“流れ”に現在も乗れているという保証はありません。
そもそも――
良い“流れ”が続くのは、少なくとも経験論的には、ごく短期間です。
そんなものが長期間つづくわけがないのですね。
過去の一時期に乗っていた良い“流れ”が今もつづいていることを当てにするのは――
ムシがよすぎるといえましょう。
以上をまとめれば――
成功体験に溺れる人の原因が、みえてきます。
現在の成功体感に頼って現在のやり方を維持するのは理にかなっているといえますが――
そのことを誤解し、過去の成功体感に頼って現在のやり方を維持するのは理にかなっていない――
以上の経験論を十分に把握していない人が――
成功体験に溺れやすいのです。