――退き際の美学
という言葉がありますね。
――退き際の美しさに対する独特の考え方ないし感性
くらいの意味で使われています。
僕は――
この“退き際の美学”よりも大切なものがあるのではないか、と――
思っています。
それは、「美学」ではなくて「実学」――
つまり、
“退き際の実学”
です。
――最良の退き際を導出する実用的な方法論
くらいの意味です。
退き際に、美しさは――
実は、必要とはされていないと思うのです。
本当に必要とされているのは――
例えば――
誰かに迷惑をかけない退き際――誰かに不利益をもたらさない退き際――
あるいは――
誰かを苦悩させない退き際――誰かを不愉快にさせない退き際――
であろうと思います。
いわば、
――実害をもたらさない退き際
です。
裏を返すと――
“実害をもたらさない退き際”というのは、それくらいに希有である――
ということでもあります。