美しいものを美しいままに取っておきたいという感情と――
美しいものを醜く汚してしまいたいという感情とは――
一見、相反するようで――
実は、そんなには違わないのではないか、と――
思うことがあります。
どちらの感情にも――
その根底には、美しさへの関心があり、憧憬があって――
美しさを享受しようとする意志を支えています。
ただ、その享受の発想が違うのですね。
取っておこうという発想は保護的であり――
汚してしまおうという発想は破壊的です。
その“保護的”とか“破壊的”とかいう表層の様相に注目をするから――
実態がわからなくなる――
実際には、どちらの感情も美しさへの関心や憧憬が起点になっている、ということに――
僕らは、もう少し気を配るほうが、よいでしょう。
何がいいたいのかといいますと――
……
……
美しいものを美しいままに取っておきたいと強く思えば思うほどに――
それを醜く汚してしまいたいとも思いやすくなるのではないか――
ということです。
つまり――
美しいものを本気で守ろうと思ったら――
あえて、その美しさに関心も憧憬も抱かないようにする――
それが――
最も確実な守り方ではないか、と――
……
……
もちろん――
自分一人がそうしたところで――
とうてい守りきれるものではありませんが――
それでも――
自分が、何か美しいものを本気で守ろうと思ったら――
まずは自分から率先して、その美しいものへの関心や憧憬を捨てる必要があるのではないか――
そう思います。