「恒温動物」「変温動物」という言葉を――
きのうの『道草日記』で用いました。
「恒温」というのは、「恒(つね)に体温が一定の」くらいの意味で――
「変温」というのは、「体温が変化しうる」くらいの意味です。
が、最近では――
これらの言葉は、あまり使われなくなっているようです。
「恒温動物」というと、哺乳類を思い浮かべ――
「変温動物」というと、爬虫類を思い浮かべる人が――
少なくないと思いますが――
恒に体温が一定の哺乳類というのは存在せず――
どの種のどの個体も、体温は微妙に変化しえます。
その意味では、哺乳類も「変温」なのです。
また――
爬虫類は、たしかに外界の環境に適応して体温を変化させうるのですが――
その変化は恒に一定の範囲内に収まっています。
その意味では、爬虫類も「恒温」なのです。
「恒温動物」「変温動物」が使われなくなって――
代わりに使われるようになってきたのが、「内温動物」「外温動物」です。
「内温動物」とは、体内で生じる熱が体温に大きな影響を与える動物であり――
「外温動物」とは、主に体外の熱源が体温に大きな影響を与える動物です。
一般に、哺乳類は内温動物に分類され、爬虫類は外温動物に分類されます。
哺乳類は、体内に取り込んだ酸素や栄養素が互いに反応して生じる熱――代謝熱――に依存しているようにみえます。
爬虫類は、基本的には代謝熱に依存しているのですが、ときには体外の熱――日光の熱など――にも依存しています。
つまり――
体外の熱源に部分的に依存しているのが「外温動物」であり、そうでないものが「内温動物」です。
最近、「恒温動物」「変温動物」が使われず、「内温動物」「」外温動物」が使われるようになっているのは――
両者の差異の本質が、体外の熱源への依存の有無にあると考えられるようになっているからです。
ところで――
*
いま――
哺乳類についても爬虫類についても、「代謝熱に依存しているようにみえる」と述べました。
ポイントは、「依存しているようにみえる」の部分です。
「たしかに依存している」とは、なかなかに断言できないのですね。
なぜか――
……
……
それは――
哺乳類も爬虫類も生物種であり――
それらの個体は、どれも散逸構造とみなせるからです。
散逸構造は――
先日来の『道草日記』で繰り返し述べているように――
常にエネルギーの流れが吹きぬいています。
ただ吹きぬいているだけではなくて――
エネルギーを散逸させながら、吹きぬいています。
このエネルギーの散逸は、ふつうは、
――熱の放出
という形をとります。
つまり――
撒き散らしいるものに依存しているというのは――
ちょっと変ですよね。
よって、「代謝熱に依存しているようにみえる」と表現せざるをえないのです。
実際には、代謝熱が依存しています。
生物種の個体が散逸構造でなければ――
代謝熱は生じ得ません。
そのような意味で――