――恒温動物は変温動物より進化している。
と――
つい僕らはいいたくなりますが――
実際には――
そうはいえません。
理由は2つあって――
1つは、「恒温動物」や「変温動物」といった言葉自体が、最近では使われなくなっている、ということです。
きのうの『道草日記』でも述べたように――
いわゆる恒温動物と変温動物との違いは――
体温を一定の範囲内に収める際に、日光などの外界の熱源を利用するかどうかの違いです。
恒温動物は外界の熱源を利用せず、変温動物は外界の熱源を利用するのですね。
よって――
最近では「恒温動物」は「内温動物」と呼ばれ、「変温動物」は「外温動物」と呼ばれています。
では、「恒温動物は変温動物より進化している」の代わりに、
――内温動物は外温動物より進化している。
といえばよいのかというと――
そうもいきません。
「恒温動物は変温動物より進化している」といえない2つめの理由は――
どちらも現在の自然界に生息している動物である点には変わりがない、ということです。
恒温動物も変温動物も同じように高度に進化していると考えざるをえないのですね。
しばしば、
――「人は猿から進化した」は間違いだ。
といわれます。
――正しくは「人や猿は、人でも猿でもない原始類人猿から進化した」である。
と――
同じような理由で、
――「恒温動物は変温動物より進化している」は間違いだ。
といえます。
――正しくは「恒温動物や変温動物は、恒温動物でも変温動物でもない原始脊椎動物より進化している」である。
と――
恒温動物は、変温動物と比べ、体温を高く狭い範囲内に収めています。
その分、変温動物よりも多くの栄養素を取り込み続ける必要があります。
変温動物は、外界の熱源を上手に活用することで、取り込む栄養素の量を節約しているのですね。
いわゆる“省エネルギー”の価値観でみたら、変温動物は恒温動物より優れています。
この点からも、「恒温動物は変温動物より進化している」といえないことは、明らかです。