マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

笑顔を撮りたいのなら

 カメラマンの人が、被写体になっている人に向かって、
「笑って下さ~い!」
 と注文をつけている場合があります。

 笑顔を撮りたくて、そうしているのでしょうが――
 たぶん下手なカメラマンです。

 少なくとも、人の笑顔を撮るのに慣れてはいない――

 人の笑顔を撮るのに慣れているカメラマンは――
 しぜんな雑談の流れの中で笑わせています。

「笑って下さ~い! …っていって本当に笑ってくれる人は、なかなかいないんですけどね…、かえって顔がひきつっちゃったりしてね」
 などといいながら――

 不意に、
「…かといって、カメラを構えながら『笑わないで下さ~い』っていうのも、どうかと思いますしね」
 などと首を捻ってみせたりする――

 などなど――

 ……

 ……

 上手なカメラマンは――

 ふだんから雑談のネタを幾つもの用意していたり――
 目の前の出来事をとっさの機転で雑談に取り入れたり――

 さまざまな工夫を重ねながら――
 その都度、確実に、人の笑顔を写しとっています。

 しぜんな笑顔を撮りたいのなら――
「笑って下さ~い!」は禁句なのです。