大自然の営みに比べれば、人の心の悩みなどは取るに足らない――
といった言い方が、ときに、なされますが――
それは――
決して大自然への憧憬や崇拝に基づいているのではなく――
もっと決定的な力関係の差が――
前提となっています。
……
……
そのような力関係を――
人が、最もよく実感できるのは――
自然災害の発生時でしょう。
きょうも――
鳥取県の中部で――
そのニュースを目にした瞬間――
それまでの僕の心の中に占めていた悩みごとの幾つかは――
すっかり消えてなくなりました。
(たしかに、取るに足らないな)
と実感しました。
5年前の東日本大震災を経験しています。
その記憶が、
――取るに足らない。
の実感を強めたことも間違いありません。
……
……
ポイントは――
大自然が、人を困らせようと思って、自然災害を発生させているわけではない――
ということでしょう。
仮に――
大自然に何らかの意思があって、自然災害を意図的に発生させていたのだとしても――
たぶん、人を困らせようと思って、やっているわけではないはずなのです。
人の都合などは――
とくに念頭には置かないに違いありません。
大自然の営みに比べれば、人の心の悩みなどは取るに足らない――
という言い方は――
大自然の存在に比べれば、人の存在は無視されうるほどに卑小である――
という認識に――
おそらくは由来しています。
それは――
大自然への憧憬や崇拝とは違う――
自虐にも似た謙虚な諦念です。