経済でつまずいた為政者が――
外交に活路を見出すのは、よくあることですが――
この方針転換は理に適っているといえます。
外交は――
基本的には、交渉国の為政者やその周辺の外交官たちと向かい合う営みです。
相手にするのは、為政者や外交官たちといった個々の心理です。
一方――
経済は――
基本的には、多種多様な市場関係者たちから成る集団と向かい合う営みです。
相手にするのは、多種多様な市場関係者たちの集団の心理です。
外交にせよ経済にせよ――
根底には人の心理があります。
外交政策も経済政策も――
原理的には――
他者の心理に何らかの影響を与えて、それを制御しようとする試みです。
が――
人の心理を制御しようというのは――
たとえ、たった一人の心理であっても――
かなり困難です。
そして――
外交であろうと経済であろうと――
相手にしなければならない心理は、決して一人では済みませんから――
外交も経済も、とんでもなく困難である、と――
いえるわけですが――
それでも――
その困難の度合いには――
桁違いの差があるといえます。
どれくらいの差かというと――
おそらく――
外交で向かい合うべき統治者や外交官たちの人数と――
経済で向かい合うべき市場関係者たちの人数と――
くらいの差です。
なので――
為政者としては――
まず経済に手を出して――
それにつまずいたら、外交に手を出す――
というのが、もっとも合理的なのです。