マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

専制君主国家は“近心”が鍵

 ――民心が離反して政権が崩壊した。

 などといいますが――
 これは、あくまで民主主義国家での話です。

 専制君主国家では、いささか様相が異なります。

 ……

 ……

 民主主義国家は、

 ――主権在民

 です。

 よって――
 統治者は、“民”――つまり、国民――の支持を失えば――
 政権は崩壊します。

 一方――
 専制君主国家は、

 ――主権在君

 です。

 よって――
 少なくとも理屈の上では――
 統治者に“君”――つまり、君主――の自覚がありさえすれば――
 政権は存続します。

 が――
 現実は、そう簡単ではありません。

 君主も人です。

 良いところがあれば悪いところもある――
 強いところがあれば弱いところもある――
 巧いところがあれば拙いところもある――

 そんな一個の人間です。

 人は、一人では何もできません。
 必ず誰かに支えられ、助けられている――

 君主も同じです。
 君主を支え、助ける者たちに支えられ、助けられています。

 そういう者たちのことを――
 ふつうは、

 ――側近

 と呼びますね。
 
 この側近の多数派の支持を失えば――
 君主は、あっという間に立ち行かなくなります。

 政権が崩壊するのに要する時間は――
 ほんの数日でしょう。

 つまり――
 専制君主国家における「主権在君」の実相は――
 実は「主権在“側近”」なのです。

 ――主権在近(しゅけんざいきん)

 とでも呼んでおきましょうか。

 さて――

 ……

 ……

 民主主義国家の政権の安定性は――
 民心をみればわかります。

 国民の多数派から支持をされていれば――
 政権は盤石です。

 一方――
 専制君主国家の政権の安定性は――
 民心をみてもわかりません。

 国民の全員が支持をしていなくても――
 側近の多数派が支持をしていれば――
 政権は盤石です。

 つまり――
 専制君主国家では、「民心」ではなく、「“側近”心」をみなければなりません。

 ――近心(きんしん)

 とでも呼んでおきましょうか。

 専制君主国家で鍵を握っているのは――
 この“近心”です。