――敵を欺(あざむ)くには、まず味方から――
などといいますね。
……
……
敵の欺き方は、ともかく――
味方の欺き方については――
十分に気をつけないといけないでしょう。
例えば――
A国の指導者が、
――B国はけしからん! 懲らしめねば! 戦争だ!
と――
本当は、そんな気などサラサラないのに――
B国の指導者やその支持者らを欺くために――
公の場で、そういったとします。
もちろん、「敵を欺くには、まず味方から――」ですから――
A国の指導者は、B国の指導者やその支持者らだけでなく、自らの支持者らをも欺くことになります。
A国の指導者の発言を――
A国の指導者の支持者らが真に受けているのをみて――
B国の指導者やその支持者らは、
――A国の指導者は本気で戦争を仕掛けるつもりだ。
と思うでしょう。
その意味で――
A国の指導者は、たしかにB国の指導者やその支持者らを欺ける――
ということがいえそうです。
が――
ここで失念すべからざるは――
A国の指導者の支持者らも、たしかに欺かれている――
ということです。
――我が国の指導者は本気でB国に戦争を仕掛けるつもりだ。
と――
この場合――
戦争を仕掛けることに強く反発する支持者らは――
支持をやめるでしょう。
それだけでは飽きたらず――
議会で弾劾をしたり、軍事クーデターを起こしたり、暗殺を企てたりするかもしれません。
つまり――
A国の指導者は、敵だけでなく、味方をも欺く結果、自らの政治生命を失ったり、本物の生命を危うくしたりするかもしれない――
ということです。
……
……
――敵
は、所詮は敵なので――
どのように欺いたところで、どうということはありませんが――
味方の欺き方を間違えると――
思わぬ命取りとなりえます。