マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

恋人以上に恋しく思う

 ある恋歌で、

 ――恋人以上に恋しく思う。

 というフレーズを――

 10代の頃に――
 耳にしました。

(陳腐なレトリックだ)
 と思いました。

 ――恋人以上に恋しく思うなど、普通はありえない。それくらいに激しく、恋をしているのだ。

 そんな意味合いの修辞であると――
 当時の僕は考えたのです。

 ……

 ……

 が――

 そうではありませんよね。

 ……

 ……

 おととい――
 久しぶりに同じ恋歌を耳にして――

 そう思いました。

 ……

 ……

 恋人以上に恋しく思うなど――
 珍しくもありません。

 恋人が恋人を思う想いは――
 両想いです。

 恋人でないのに恋人を思う想いは――
 片想いです。

 想いの強さにおいて、片想いが両想いをしのぐことなど――
 いくらでも起こりうるでしょう。

 だって――
 片想いなのですから――

 ……

 ……

 ――恋人以上に恋しく思うなど、ありえない。

 などとは――

 我ながら――
 実に浅はかなことを考えたものです。