マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

時間稼ぎ戦術はプロフェッショナルか

 『花木蘭伝説』の続きを書くつもりでしたが――

 28日深夜のサッカーワールド・カップの試合が非常に興味深かったので――

 急きょ――
 そちらを書くことにします。

     *

 多くの方々がご存じのように――

 グループHの最終節で――
 日本代表はポーランド代表と対戦し、0-1 で敗れました。

 ところが――
 今大会から導入されたフェア・プレーポイントの差で――
 セネガル代表を辛くも振り切り――
 決勝トーナメント進出を決めています。

 世界中から注目され、批判されたのは――
 日本が試合終盤で採った時間稼ぎ戦術です。

 日本がポーランドに先制を許したとき――
 他会場では、セネガルが、コロンビア代表を相手に 0-0 という状況でした。

 そのまま日本が 0-1 で敗れれば、得失点差で日本の敗退が決まるところでした。

 が――
 そのうちに、セネガルもコロンビアに先制を許します。

 フェア・プレーポイントの差でセネガルを上回っていた日本は――
 これによって 0-1 で負けても、決勝トーナメントに進出できる見通しが立ちました。

 しかし――
 もし、追加点を許して 0-2 で負けたら、敗退です。

 そこで――
 日本が採った戦術は時間稼ぎした。

 ポーランドに対し、0-1 のままで負けることを――
 積極的に選んだのです。

 もし、セネガルがコロンビアに追いついていたら――
 意味のない時間稼ぎでした。

 コロンビアはセネガルに同点を許さないと信じてのことでした。

 この時間稼ぎは――
 少なくとも確率論的には正解でした。

 苦境にあったのはコロンビアも同じです。

 セネガルに追いつかれ、かつ日本がポーランドに追いついたら――
 コロンビアは敗退する立場にありました。

 よって、

 ――コロンビアは死に物狂いでリードを守るに違いない。

 との読みが――
 日本代表チームの首脳陣にはあったと考えられます。

 その読みが当たり――
 日本は、決勝トーナメント進出を決めたのです。

 ……

 ……

 が――

 当然ながら――
 この日本の戦術は、世界各国のサッカー批評家から厳しい批判にさらされます。

 他力本願で決勝トーナメント進出を目指すという発想は――
 清々しいスポーツマン・シップには反します。

 サッカーを志す世界中の少年・少女たちに善い印象は与えなかったでしょう。

 また――
 プロ・スポーツ選手としても――
 責任感の欠如を指摘されうる発想でした。

 プロ・スポーツ選手は、スポーツ・ファンが料金を払って試合を楽しむことで、生計を立てます。
 そのファンをガッカリさせるような試合運びは、アマチュアとしてはともかく、プロフェッショナルとしては失格なのです。

 とはいえ――

 日本人のサッカーファンの多くは――
 日本の決勝トーナメント進出を心から喜んだことも、また――
 事実なのですよね。

 日本の時間稼ぎ戦術は――
 日本人のサッカーファンを喜ばせるという意味では――
 あきらかにプロフェッショナルの技です。

 ……

 ……

 プロ・スポーツ選手は――
 すべてのスポーツ・ファンに対し、プロフェッショナルの責任を果たすことが理想でしょう。

 が――
 現実には――
 一部のスポーツ・ファンに対してのみ、プロフェッショナルの責任を果たそうとすることも――
 珍しくはありません。

 一部のファンにのみ通用するプロフェッショナリズムというのは――
 はたして、

 ――真のプロフェッショナリズム

 といえるのでしょうか。

 この問いへの答えは――
 簡単ではないと思います。