――攻撃は最大の防御である。
という言葉がありますね。
(たぶんウソだ)
と――
僕は思っています。
(人の思い込みが言葉になったものにすぎない)
と――
……
……
たしかに、
――こちらが攻撃をすれば、むこうは防御をするしかなく、攻撃はできないはず――
という考えは――
少なくとも直感的には――
明らかなように思えます。
が――
……
……
実際の勝負の世界では――
そのような考え方が通用しない例に――
事欠きません。
攻撃とは、しょせんは攻撃なのであって、防御ではないのです。
そもそも――
攻撃の際には――
防御をいったんやめなければなりません。
そこに――
多少なりとも隙が生まれます。
その隙を突かれて手痛く負ける例の――
何と多いことか――
……
……
もし、防御のつもりで攻撃をするのであれば、
――攻撃は最も安直な防御である。
といってよいでしょう。
……
……
ちなみに、
――攻撃は最大の防御である。
の原典は――
はっきりしないそうです。
ラテン語の格言というのが――
もっともありえそうな出自ですが――
実は――
似たような言葉を、洋の東西を問わず、そこら中で見出せるといいます。
この命題が人の直感に訴えやすいことの証左といえましょう。
……
……
なお――
出自を『孫子』に求める人もあるようですが――
それは――
おそらくは間違いです。
『孫子』で説かれているのは、
――勝てなさそうなら、防御せよ。勝てそうなら、攻撃せよ。
だそうです。
つまり――
勝てそうな場合に限り、
――攻撃は最大の防御である。
といっているにすぎないのですね。
勝てそうか勝てなさそうかの判断にこそ本質があり――
攻撃か防御かの選択には本質はない――
ということです。