――恋は男女で違わないか。
という問いがあります。
つまり、
――男にとっての恋と女にとっての恋とは、人の心の働きとして、同じとみなせるのか。
という問いです。
……
……
この問いに対して――
僕は――
だいたい2通りの答え方をします。
「違うに決まってるじゃないか」
と、
「同じに決まってるじゃないか」
との2通りです。
どういうことか――
……
……
きのうの『道草日記』で――
恋について僕が語るときに、
恋 ≒ 生殖欲求
の図式を明示する場合と明示しない場合とがある――
と述べました。
実は、
恋 ≒ 生殖欲求
の図式を――
明示する場合は、
――違うに決まってるじゃないか。
という答え方になり――
明示しない場合は、
――同じに決まってるじゃないか。
という答え方になるのです。
理由は――
おわかりでしょう。
……
……
――生殖欲求は、男女で相当に違うはず――
との前提を無視するか無視しないかで――
答え方が変わっているのです。
「男女」といって――
両性を明快に区別しても――
そこは――
同じ生物種ヒトのことですから――
少なくとも生物的に比べたら――
共通点は多いはずです。
例えば――
男性の生殖欲求を、雄イヌの生殖欲求と比べるよりは、女性の生殖欲求と比べるほうが、ずっと似ているでしょうし――
女性の生殖欲求を、雌ネコの生殖欲求と比べるよりは、男性の生殖欲求と比べるほうが、ずっと似ているでしょう。
が――
おそらく社会的に比べたら――
相違点のほうが遥かに多いはずです。
例えば――
ある男性が、特定の女性のことを念頭に、
――うわぁ。あの人との間に子孫を残したい。
と思う感情と――
ある女性が、特定の男性のことを念頭に、
――ああぁ。この人との間に子孫を残したい。
と思う感情とは――
おそらく質的に全く異なる、と――
僕には思えます。
……
……
つまり――
生殖欲求の生物的共通点を明示し、意識するならば、
――恋は男女で違わない。
となり――
生殖欲求の社会的相違点を明示し、意識するならば、
――恋は男女で違う。
となるのです。