マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

一連の逮捕劇の根っこにあるのは

 きょうも『人間を2つに分ける』の話の続きを述べるつもりでしたが――

 きのうの夕方に飛び込んできた、

 ――カルロス・ゴーン、逮捕!

 のニュースが――
 ちょっと衝撃的でしたので――

 きょうは――
 そのことについて――

 ……

 ……

 一報を知ったとき――
 真っ先に思い浮かべたのは、

 ――絶対的な権力は、絶対的に腐敗する。

 との言葉でした。

 オリジナルは、

 ――Absolute power corrupts absolutely.

 だそうです。
 19世紀イギリスの歴史家ジョン・アクトンの言葉といいます。

 ……

 ……

 カルロス・ゴーンさんは――
 フランスの大手自動車メーカーの最高経営責任者であり、かつ日本の大手自動車メーカー2社の会長職を兼務していました。

 いずれも国際的に名の知れた自動車メーカーです。

 これら3つの自動車メーカーは――
 2年前に、おそらくはゴーンさんが主導して、緩やかな連合体を形成しています。

 その扇の要の役に――
 ゴーンさんは就いていました。

(それで、権力が集中しすぎて、絶対的になってしまった)
 と感じます。

 逮捕の決め手は明らかにはされていません。

 検察の嫌疑は報酬額の虚偽記載だそうですが――
 いわゆる別件逮捕の印象が濃厚です。

 背景に――
 もっと大がかりな醜聞が隠れているのかもしれません。

 あるいは――
 経営権を巡る権力闘争の様相もないわけではありません。

 抗争の過程が、識者によって、具体的に推測されてもいます。

 いずれにせよ――
 一連の逮捕劇の根っこにあるのは、

 ――退き際

 でしょう。

 先ほどのジョン・アクトンの言葉に依れば――
 いったん権力が絶対的になってしまえば――
 それは、絶対的に腐敗するのです。

 よって――
 ゴーンさんが、どんなに有能で清廉な人物であったとしても――
 自身の権力が腐敗するのを止める手立ては講じえなかった――
 ということになります。

 もし止めるなら――
 権力の絶対化を止める必要があったのですね。

 つまり――
 ゴーンさんは、どこかもう少し早い段階で“退き際”を考える必要があった――
 もう少し慎重に自分の“退き際”を見据えていれば、権力の絶対化を防げたかもしれない――

 そういうことです。

 ……

 ……

 国際的に名の知れた3つの自動車メーカーの緩やかな連合体を形成しえた時点が――
 少なくとも、傍目には、
(退き際としてベストだったかも……)
 と――
 個人的には思います。

(でも、それは難しかったろうな)
 とも――
 思います。

 ――さあ、これからだ!

 と――
 ふつうは思いますよね。

 それが人情というものです。

 ……

 ……

 今回の報道を受け――
 これまで、あまり公には語られてこなかったゴーンさんの人柄が表に出てきました。

 曰く、

 ――強欲で冷徹なだけの経営者であった。

 とか、

 ――子どもの頃から規則を守れなかった。

 とか――

 ……

 ……

 ――そんなカルロス・ゴーンが“退き際”を考えるのは、難しかった。

 と――
 いいたいのではありません。

(人間なら誰しも、難しかった)
 と――
 いいたいのです。

 それが、

 ――退き際

 というものです。