マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

老化を肯定する修辞

 ――老いる力

 について――
 きのうの『道草日記』で述べました。

 これと紛らわしい言葉に、

 ――老人力

 というのがあります。

 こちらは――
 ほぼ修辞です。 

 例えば――
 歳をとって、物忘れが激しくなったときに、

 ――だいぶ老人力がついてきた。

 といったりします。

 つまり――
 常識的には好ましくない変化である、

 ――老化

 を、あえて好ましい変化と捉えてみよう――
 という発想なのですね。

 歳をとって、階段の上り下りがツラくなってきた――

 ――老人力がついてきた。

 歳をとって、理屈をこねるのが億劫になってきた――

 ――老人力がついてきた。

 ……

 ……

 そんなふうに、あえて肯定的に言い表してみたら――
 老化という否定的な変化であっても、いくらか中立的に捉えなおせるのではないか――

 そういう提案です。

 ……

 ……

 まあ――
 こちらも、

 ――老いる力

 と同様に――
 幻想的ではありますが――

 修辞というのは、必然的に幻想みたいになりますから――

 ある意味――

(清々しい)
 と、いえます。

 少なくとも、
(割り切っている)
 とは、いえるでしょう。

 ……

 ……

 「老人力」の提案は――
 1997年頃になされ――
 その後、1999年頃にかけて一大ブームとなりました。

 そのうちに、

 ――老いる力

 つまり、

 ――老いを受け入れ、巧みに生きていく力

 とか、

 ――老人の力

 つまり、

 ――老人が備えていて、若者にはない能力

 とかいった意味で誤用されるようになったといわれています。