――パンスペルミア説(panspermia hypothesis)
は、
――生命は、地球上の空間で誕生したのではなく、地球上以外の空間で誕生した。
という仮説であることを――
ここ数日の『道草日記』で繰り返し述べています。
ここでいう、
――地球上の空間
とは、「地球」という惑星の表面近傍の空間を指し――
「空間」とは呼んでいるものの、実際には球面のような空間を意味しています。
一方、
――地球上以外の空間
とは、地球上の空間以外の全ての空間を指し――
事実上、全宇宙の空間を意味しています。
地球上の空間は、地球上以外の空間と比べると、ほとんど皆無に等しい狭小の空間である、ということに――
留意が必要です。
……
……
パンスペルミア説は――
少なくとも2つに分けられます。
1つは、
――生命は、惑星や衛星などの天体で誕生した。[A]
というものであり――
もう1つは、
――生命は、惑星や衛星などの天体とは全く異なる場所で誕生した。[B]
というものです。
僕は――
もし、パンスペルミア説が正しければ、
([B]のほうがありえそうだ)
と考えています。
[A]は、どう考えても、不自然です。
もし、生命が、惑星や衛星などの天体で誕生した、と考えるなら――
それら天体の有力候補として、地球は除外できません。
なぜなら――
地球には、現に今、生命が存在しているからです。
地球を除外できないのなら、
――何のためのパンスペルミア説か。
という話になります。
では――
[B]を採用するとして、
――惑星や衛星などの天体とは異なる場所
とは――
具体的に、どんな場所でしょうか。
……
……
――恒星
と答えると――
何だか笑い話に聞こえますが――(笑
……
……
ひょっとすると――
案外――
そんなには荒唐無稽でないかもしれません。
もちろん――
今の僕らがもっている知識や理解に基づけば――つまり、恒星の表面や近傍の環境についての知識や理解に基づけば――
恒星で生命が誕生したとは、ちょっと考えられません。
が――
その知識や理解が、将来、書き換わる可能性は、ゼロではないのです。
むしろ――
科学史を振り返れば――
書き換わる可能性は、ゼロでないどころか、きわめて高い、といえます。
今の僕らが思いもしないような過程を経て――
生命は、恒星の表面ないし近傍で誕生しているかもしれません。
……
……
他に考えられる場所としては、
――宇宙空間
が挙げられます。
もちろん――
今の僕らがもっている知識や理解――宇宙空間についての知識や理解――に基づけば――
宇宙空間で生命が誕生したとは、ちょっと考えられませんが――
その知識や理解が書き換わる可能性は、前述の通り、決して低くはないのです。
……
……
結局――
もし、パンスペルミア説が正しければ――
今の僕らがもっている知識や理解の多くが劇的に書き換わるはずなのですね。
ここが――
パンスペルミア説の隠されたポイントであろうと思います。
僕がみたところ――
今日、パンスペルミア説を支持している人たちの多くは――
この、
――知識や理解が書き換わる
ことの可能性に――
胸を躍らせています。
そして――
その根拠は――
生命の誕生という、おそらくは稀有な事象が、よりによって地球上の空間ように、全宇宙の空間に比べたら皆無に等しいような狭小な空間で、限定的に起こった――
とは考えにくいという直観ないし直感です。
……
……
――知識や理解が書き換わる。
というのは――
自然科学の最高の醍醐味といえます。
今日――
パンスペルミア説を支持している人たちは、間違いなく少数派であろうと思いますが――
その醍醐味への感受性は、
――自然科学的素養
の1つではないか、と――
僕は感じます。