――政権の首班は権力闘争に強くなければ話にならない。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
――権力闘争に強い。
ということは、
――優れた政権を築く。
ということにとっての――
十分条件ではないが、必要条件ではある――
ということです。
きのう辞意を表明された安倍総理は――
その必要条件をしっかりと満たしていました。
ところで――
……
……
2019年5月16日の『道草日記』で――
僕は、
――日本の政権の中枢に適した政治家像
を述べました。
簡単にいうと、
――自分自身の個人的な不安に敏感であり、かつ、その不安を絶えず制御し続けてきた政治家こそが、日本人が集団として抱く不安にも敏感であり、かつ、その不安を絶えず制御し続けていけるに違いないので、もっとも日本の政権の中枢に適している。
となります。
その根拠は――
2019年5月11日の『道草日記』で述べたように、
――日本人は、不安の感受性を高める遺伝子をもっている人の割合が、外国人と比べ、有意に高いらしいから――
です。
もちろん――
それは学術的に究められた根拠ではなくて――
例えば、
――日本では、君主の家系の入れ替えが1400年以上にわたって起こらなかった。
ということを状況証拠とする推定でしかないのですが――
この推定には――
それなりの説得力があるように――
僕には感じられます。
このことを踏まえるならば――
日本の政権の首班にとって必要な資質とは、
――日本人が集団として抱く不安を巧みに制御しながら、権力闘争に勝ち続けること
といえます。
もちろん――
この資質も――
優れた政権を築くための必要条件であって、十分条件ではありません。
が――
ここで僕が強くいっておきたいことは、
――日本人が集団として抱く不安を制御できないような政治家に、日本の政権の首班は絶対に務まらない。
ということです。
安倍総理は――
日本人が集団として抱く不安を一見、制御できないようでいて、実は、巧みに制御されていたのではないか、と――
僕は考えています。
その理由は――
明白です。
すなわち――
安倍総理が、ご自身の健康問題に常に不安を感じていらしたからに違いありません。
どんな健康問題も人を不安にさせるものですが――
とりわけ、
――潰瘍性大腸炎
は、悪化と小康とを繰り返す厄介な病気であり――
その分、余計に人を不安にさせやすいところがあります。
この点からいえば――
この国で安倍総理が歴代最長政権を築きえたことは、
――理の当然
といってよいでしょう。