マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

一部の学者たちから熱烈な関心が寄せられるのに――

 面白くて有意義な“問い”とは、

 ――新しくて答え甲斐のある問い

 である。

 

 そのような“問い”が立てられやすい学問は、

 ――面白くて有意義な学問

 である――

 と、いえよう。

 

 ……

 

 ……

 

 すぐに気付くように――

 

 ――新しさ

 は、さほど主観的ではない。

 

 が――

 

 ――答え甲斐

 は、かなり主観的だ。

 

 よって、

 ――新しさ

 と、

 ――答え甲斐

 とは――

 ――互いに独立――

 といってよいほどに――

 相異なる評価軸である。

 

 これら2本の評価軸は――

 互いに異なるがゆえに――

 一見、判りづらい学界の風潮をも、それなりに説き明かせる。

 

 例えば――

 

 ……

 

 ……

 

 ――生命とは何か。

 という問いは――

 21世紀序盤の現代――

 学際的な主題の一つとして、一部の学者たちから熱烈な関心が寄せられるのに――

 その他の学者たちからは、ほぼ一顧だにされぬ。

 

 なぜ、なのか。

 

 ……

 

 ……

 

 以下のように説き明かせる。

 

 ――生命とは何か。

 の問いは――

 あらゆる学者にとって――

 新しくはない

 

 量子力学創始者の一人に挙げられる理論物理学者エルヴィン・シュレーディンガー(Erwin Schrödinger)が、

 ――What is life?

 という題名の著作を世に問うて大反響を呼んだのは――

 1944年のことであった。

 

 この時でさえ――

 この問いは、既に「もの凄く斬新」というわけではなかった。

 

 以来、

 ――生命とは何か。

 の問いは――

 

 陳腐とはいわぬが――

 

 少なくとも――

 鮮烈ではない。

 

 さほど新しくはないことは――

 衆目が一致をするところである。

 

 が――

 

 答え甲斐の有無については――

 そうではない。

 

 概して――

 物理学者は、答え甲斐を感じやすく――

 生物学者は、答え甲斐を感じにくい。

 

 その理由は簡単で――

 

 生命現象は――

 他の現象と比較をしていると――

 思わず語り始めずにはいられないほどに神秘的で不可思議に感じられるのだが――

 

 他の現象と比較をすることなく――

 ただ生命現象だけを繰り返し観ていると――

 やがて神秘性や不可思議性は、所与のこととして受け止められるようになり――

 むしろ――

 その多様性や豊穣性、精密性、強靭性、一回性などに関心を奪われるようになる――

 

 そのためである。

 

 ……

 

 ……

 

 よって――

 

 ――生命とは何か。

 との問いは――

 21世紀序盤の現代――

 生物学の領域では、殆ど誰からも顧みられることはなく――

 物理学の領域では、研究の第一線を退きつつある大家などを強く惹きつけはするものの、これから研究の第一線へ赴かんとする若者などからは、殆ど顧みられることがない。

 

 こうした学界の風潮は――

 

 ――生命とは何か。

 との問いが――

 21世紀序盤の現代では――

 さほど新しくはないものの――

 一部の者たちにとっては大変に答え甲斐のある問いである――

 と見做せば――

 

 合点が行くのである。

 

 『随に――』