小説は、かえすがえすも不思議な手法です。
手法というのは、物語を伝えるための手法です。
不思議なのは、物語が濃密でも淡白でも、何となく成り立ってしまう、という点です。
あるんだか、ないんだか、わからないくらい淡白な物語でも、面白い作品にはなりうる。
いわゆる語り口の面白さで引っ張っていく、ということですね。
これは、他の媒体でも可能なのでしょうか?
よくはわかりません。
が、リスクが大きいことは確かでしょう。
小説と違い、マンガやTVドラマや映画などは、制作にかかる手間が膨大です。
一人でシコシコやっていれば、できあがる、というものでもない。
あ。
マンガは、そうかもしれませんね。
が、少なくともTVドラマや映画は、そうではない。
一人で作り上げるなど、ありえない。
だから、まずは伝えるべき物語を濃密にし、その上で、手法としてのTVドラマや映画に徹しなければならない。
そういう観点からみたときに、小説は、いかにも自由です。
とくに物語を濃密にしなくてもいい。
しても、しなくても、どちらでもいい。面白い作品に仕上がりうる。
もちろん、好みは別れると思いますよ。
――物語が濃密でないとイヤだ。
という人もいれば、
――どちらでもいい。
という人もいるはずです。
そういう幅の広い媒体が、小説だということです。