はっきりいえば、嫌いな詞だったのですよね。
沢田知可子さんの『会いたい』(作曲・財津和夫、作詞・沢ちひろ)のことです。
1990年のリリースです。
いまだにリクエストがかかる唄です。
優れた作品だとは思っていました。
何が嫌いだったかというと――
人を簡単に「殺した」ところです。
『会いたい』は、女性視点の詞で、亡くなった男性に想いを寄せる唄なのですが、
――とにかく人を殺せば盛り上がると思ってねえか?
と感じました。
リリースされて2、3年後の感想です。
感想というのは恐ろしい。
感想の主体の心を浮き彫りにします。
『会いたい』の詞を聴き、
――とにかく人を殺せば……。
などと思った僕は、多分、浅はかでした。
*
昨夜、TVでやっていました。
先週の『道草日記』で触れた『音楽・夢くらぶ』です。
沢田さんが出演され、『会いたい』にまつわるお話をされていました。
あの詞に通じる御経験を、沢田さんは、されているんですね。
プロの歌手としてやっていくかどうかを決めかねていたときに、相談にのってくれた先輩がいる。
その先輩は、
――オマエが歌手になるんだったら、オレが最初のファンになってやる。
といった。
嬉しかった。
その数日後に――
先輩は交通事故で亡くなってしまったそうです。
*
『会いたい』は、沢田さんの作詞ではありません。
が――
沢田さんの想いが乗り移るには十分な詞でした。
だから――
今も多くの人の心に残っているのでしょう。
10年前のマル太は、そのような背景など、思いもよりませんでした。