――地位や名誉や財産はいいから、健康だけは欲しい。
と強く思います。
健康は何物にも代えがたい。
よく「健康」とか「不健康」とか、いいますよね。
あれは、どういうことでしょうか?
例えば、
――あの人は健康だ。
とか、
――きみは、なんて不健康なんだ。
とかという。
例えば、健康を失うとは、どういうことでしょうか?
「不健康」ということでしょうか?
実際に健康を失った人を間近でみますと、とても一言では表せない深刻さがあります。
健康を失うということは、簡単にいえば――
病気になるということです。
病気は辛く、苦しく、悲しい。
一個の生命体として、この世に、ただ存在しているというだけで、辛いとか、苦しいとか、悲しいとかと思うようになる――
それが病気です。
一方、健康な人は、そんなことは当たり前だと思っています。
この世に存在できるなど、当然の権利だと思っている。
そういう人が、つい「不健康」といってしまうのではないでしょうか。
「不健康」という言葉は残酷です。
たいていの不健康は、実は健康なのだろうと思います。
暗い部屋に閉じ篭って朝から晩までDVDをみ、ご飯は夕に一食しかとらなかった――というような人を、僕らは「不健康」という。
けれど――
そんな生活ができる人は、どうみても健康です。
健康を失った人からすれば、すごく羨ましいことに違いない。
「不健康」が残酷だというのは、そうした意味です。
病気になることが健康を失うことだと、いいました。
正確には違います。
病気をもっていても、健康な人はいます。
重篤な疾患を抱えている人でも、健康な人はいます。
病気と共存できている人です。
種々の症状を上手にコントロールできている人です。
そういう人にとって、病気とは、それほど大変なことではありません。
辛さや、苦しみや、悲しみが和らげられているからです。
そのようにして勝ち取った健康には、計りしれない価値があると思っています。
無病息災よりも、むしろ健康なのではないか――
そう思うことさえ、あるくらいです。